VIX短期先物指数ETFの値動きが対象指標と異なる場合の原因

VIX短期先物指数ETFは基準価額の変動率を円換算したS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの変動率と一致することを目指して運用します。
しかし日々運用していると、VIX短期先物指数ETFの値動きが対象指標と異なる日を見かけるかもしれません。
当コラムでは考えられる原因について解説します。
VIX短期先物指数ETFの対象指標をVIX指数と混同している
VIX短期先物指数ETFは基準価額の変動率を円換算したS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの変動率と一致することを目指して運用します。
VIX先物取引は対象指標であるS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの構成要素です。
VIX指数はVIX先物取引の原資産です。
VIX指数、VIX先物およびS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンは各々別物であり、VIX短期先物指数ETFの基準価額の変動率はVIX先物/VIX指数の変動率とは一致しません。
基準価額と市場価格に注意
ETFに関する価格は2つあります。市場価格と基準価額です。
価格の決まり方がそれぞれ異なります。
市場価格と基準価額については下記のコラムで詳しく解説しております。
ETFの価格 ~基準価額と市場価格~
市場価格は市場の売買により決まる価格です。証券会社やYahooファイナンスなどでETFの価格を確認すると、市場価格が表示されています。
基準価額はETFが保有する純資産総額をその日の発行済み口数で除した値段のことです。運用会社は基準価額を1日に1回、公表する仕組みとなっています。
VIX短期先物指数ETFの基準価額は当社の商品ページで確認することができます。
VIX短期先物指数ETF(318A)
基準価額と市場価格に乖離が生じたとき、投資家はETFと連動指標が連動していないと感じるかもしれません。
VIX短期先物指数ETFは、市場価格ではなく、基準価額の変動率を円換算したS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの変動率と一致することを目指して運用していることにご留意ください。
基準価額と市場価格に乖離が生じる理由は主に2つあります。
1つは、ETFの市場価格は市場の需給によって決まるためです。ETFの市場価格がどのように決まるかについては下記のコラムで解説しています。詳しく知りたい方は是非ご覧ください。
ETFの仕組み~マーケットメイカーが需給を調整する~
VIX短期先物指数ETFにも、マーケットメイカーはいますが、売りか買いの一方が旺盛で理論値(基準価額)通りに市場価格が推移しないことがあります。
2つめは、取引所の値幅制限が考えられます。
東証では売買制度で1日の上限/下限の値段が決められています。
内国株の売買制度
1日における上限/下限は変動率に直すと±25%です。
仮にS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの変動率が+40%を記録した場合、取引価格は売買制度の制限があるため+25%でストップ高気配になります。反対にS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの変動率が-40%を記録した場合、取引価格は売買制度の制限があるため-25%でストップ安気配になります。
先物ロールによる影響
VIX短期先物指数ETFは基準価額の変動率を円換算したS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの変動率と一致するために、保有する先物を毎日ロールします。
また上述した通り、ETFの基準価額は保有する純資産総額をその日の発行済み口数で除して算出します。
VIX短期先物指数ETFの純資産総額は、簡略化すると米国債券とVIX先物取引、米ドル、日本円が時価評価され、そこから負債やコストを差し引いて算出されます。
この時、VIX先物は清算値(セトルメント・プライス)で時価評価されます。
ここで影響が出る可能性があるポイントが2つあります。
1つはロールする枚数を概算で算出していることにより、ロール枚数にずれが生じる可能性があります。
対象指標のメソドロジーを用いてロールする先物枚数を算出します。
しかし先物枚数を算出する時点で先物の清算値はまだわかりません。かといって清算値が出てから先物のロール枚数を算出しても市場の取引時間が終わってしまっているので取引できません。
なので、ロール枚数は概算であることを承知で、その概算ロール枚数を実際に取引します。
概算に使用した先物枚数と当日の清算値にそれほど差異が無ければ問題ないのですが、大きく異なる場合はETFの基準価額に影響を与えます。
2つめは、ロール取引の結果によって影響がでる可能性があります。
上述の通り、VIX先物は清算値で評価されるので、ロール取引を執行するとき、当社のトレーダーは清算値をターゲットに執行します。しかし、相場状況によっては必ずしも清算値で取引できない場合があります。
清算値で取引できなかった場合、その価格と清算値の差分が利益もしくは損失としてETFに計上されます。その結果ETFの基準価額に影響を与えます。
為替の影響
VIX短期先物指数ETFの対象指標はS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンですが、当ETFは基準価額の変動率を円換算したS&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの変動率と一致することを目指して運用します。
したがって、S&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの変動率に米ドル円為替レートの変動率を加える必要があります。
例としてわかりやすくいうと、S&P 500 VIX短期先物指数超過リターンの変動率が+10%で米ドル円為替レートの変動率が-10%だった場合、VIX短期先物指数ETFが目指すべき基準価額の変動率は0%となります。
米国債の影響
VIX短期先物指数ETFは米国債を信託財産の総額の2分の1を超える額保有しています。これは投資信託協会の投資信託等の運用に関する規則に定められた原則に則るためです。
ETFの基準価額は保有資産が時価評価されるため評価損益が基準価額に加味されています。2025年1月15日時点で米国債10年物の利回りは4.7%台です。市場環境によってはETFの基準価額に影響を及ぼす程度の評価損益が発生する可能性もあります。
費用の影響
ETFの運用には費用が発生します(下図参照)。
ETFの純資産総額が小さい時期だと、その他費用・手数料も基準価額に影響を及ぼす可能性があります。
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